歯周組織再生療法(人工的な顎骨の再生) – 骨移植、エムドゲイン

軽い歯周病であれば、歯の周りをクリーニングすることによって治りますが、炎症が歯肉の奥まで進行してしまい、歯周組織の破壊がひどい場合には、歯周組織を回復させるための手術(歯周外科手術)が必要になります。この手術を行う際に、歯周組織再生材料を使うことによって、歯周病で溶けてしまった骨を回復させます。

たとえばインプラントは、顎の骨に金属(チタン)を埋め込みます。
インプラントを行なう前に、CTやレントゲンで検査を行ないます。顎を立体的に診断し、できるかどうかを決めていきます。
しかし、埋め込むのに十分な骨がない場合には、支えが少ないため、インプラントが難しくなります。
顎の骨は、基本的に歯を支えるための骨です。歯がなくなると歯槽骨の役割がなくなるため骨は吸収しやすくなります。

たとえ骨不足と診断された場合でも、それを補う方法もあります。
骨を他の部分から移植したり、新しい骨を作る方法です。

歯周組織再生療法には、「骨移植 (自家骨移植、人工骨移植)」または「エムドゲイン」を使う方法があります。
いずれの方法も、歯肉を切って骨を露出させる必要があるので、ほとんどの場合、歯周外科治療と同時に行います。

骨移植

歯科の分野でも、インプラントという新しい技術が発展したため、骨移植はよく行なわれるようになりました。

自己移植が主流

移植する骨は、ご自分の骨で行うことが主流です。人工骨もありますが、安全性や生体との親和性などから、インプラントを立てることを考えると、ご自分の骨がベストです。

どこから採取するか

少量の移植で済む場合、下顎の別の場所から移植します。神経や血管の通っていない部分を選んで移植するので安全です。

移植の流れ

1、局所麻酔をします。
2、他の部分から骨を採取します。
3、採取した骨を欠損部に補填し、膜を置いて縫合します。

手術にかかる時間は、1時間~1時間半と見ていただければよろしいです。
できれば、次の日のお仕事などがお休みの日の方が良いでしょう。

骨移植にかかる治療費

保険適用外となります。

1ブロックにつき、35,000円(税込38,500円)

例えば奥歯1~2本だけ治療が必要な場合には1ブロックでよいこともありますし、全体的に治療が必要な場合には3~4ブロック必要になってくることもあります。

メリット

  • 骨量を増やすことによって、インプラント治療が可能になります。
  • 安全性や審美性の向上につながります。
  • 歯茎のバランスを整えることも可能です。

リスク表記

  • 骨造成法の種類によっては、手術回数が増えます。
  • 通常のインプラント治療よりも、痛みや腫れが生じやすくなります。
  • 通常のインプラント治療よりも、感染のリスクが高まる場合があります。

エムドゲイン

エムドゲイン・ゲルの主成分

エムドゲインの主成分は、子供の頃、歯が生えてくる時に重要な働きをするたんぱく質の一種であるエナメルマトリックスデリバティブです。このたんぱく質は、歯周組織の形成に大きく関与することがスウェーデンでの研究で分り、幼若ブタの歯胚(歯の種のようなもの)から抽出精製されています。

安全性について

現在、世界30カ国ほどの範囲で使用されていますが、感染症の報告はなく、また、現在の化学水準に基づく高い安全性確保の下で管理されている幼若ブタを用いますので、安全性は確立されています。
安全性は高く、効果は高いのですが、再生できる骨量には限界があるため、高度に進行した歯周病は適応にならないのが現状です。

治療の流れ

1、局所麻酔をします。
2、治療する部分の歯肉を切開・剥離します。
3、歯根表面を清掃し、エムドゲインゲルを塗布します。
4、切開した歯肉を縫合します。

手術にかかる時間は、1時間~1時間半と見ていただければよろしいです。
できれば、次の日のお仕事などがお休みの日の方が良いでしょう。

エムドゲイン治療にかかる治療費

保険適用外となります。

1ヶ所につき、35,000円(税込38,500円)

となります。

治療が成功するかどうかはどの方法を用いて治療を行ったのかということよりも、スケーリング・ルートプレーニングによって感染物質が徹底的に除去できているかどうかや、毎日のプラークコントロールがしっかりとできているかどうかなどがポイントとなります。

メリット

  • 顎の骨や歯根膜を再生させたり増強させることができる。
  • 歯肉が歯根面に密着しすことで審美的な回復にもつながる。
  • エムドゲインの成長因子によって歯茎が下がりにくい。

リスク表記

  • 術後1~2週間の間、腫脹や内出血、咬合痛などが起こることがあります。
  • 薬剤服用によるアレルギー反応が起こることがあります。
  • 口腔内の状態によって治療方法や治療の難易度が変わるため、必ずしも同様の治療結果となるとは限りません。